新規マニュアルの担当者になったら

新規マニュアルの担当者になったら

2022年2月3日

新規マニュアルの担当者になったら

メーカーのマニュアル担当者が、新規マニュアルの制作を担当することになったら、何をどういった手順で進めていけばいいのだろうか?

新規マニュアルを制作するということ

製品が開発されるたびにマニュアルは制作される。ただし、一から作成するのではなく、開発製品と同じシリーズの既存マニュアルをもとに、仕様変更箇所を書き直したり、新機能説明を追加したりして、マニュアルを制作していることが多い。

新規制作開始までの道のり

製品が開発されるたびに、新規にマニュアルを企画/制作することはまずあり得ない。メーカーのマニュアル担当になってから一度も新規マニュアルを制作したことのない担当者も多いのではないだろうか?

それもそのはずで、メーカーでマニュアルを新規に制作する場合、多くの手続きや手順を踏む必要がある。

まず、企画を立案して社内の関連部署にプレゼンし、了承を得る。
つぎに、制作経費を算出して予算を計上し、会社から了承を得る。

これらの了承を得て初めて新規マニュアルの制作がスタートする。 制作がスタートしたら最初に決めるのが制作会社である。

いつもマニュアル修正を依頼している制作会社にする場合は、即作業に入れるが、新しい制作会社を募集する場合は、制作会社を探し出して選定する作業が必要となる。

制作会社を変更することで、既存マニュアルにはない新たな視点でマニュアルを制作できる。新規マニュアルを制作する場合は、手間はかかるが新しい制作会社を探すことをお勧めする。

改編時とはこんなに違う!?必要な作業

新規マニュアルの制作には、そのほかにも、以下のようなマニュアル改編よりも手間のかかる作業が発生する。
・デザインや用語などの基準書の作成
・極秘資料である仕様書の管理
・開発部門への質問の仲介
・原稿のチェック
・確認が必要な部署へのチェック依頼
そのため、製品が開発されるたびに、この作業を繰り返すことは、費用的にも労力的にも無理がある。

ただし、メーカーのマニュアル担当者でいる限り、品質保証部門から既存マニュアルのクレーム対応で全面改訂を要望されたり、新製品の開発に伴い新規マニュアルが必要になったり、他部門から新規マニュアルの制作を依頼される可能性は十分にある。

ディレクターで決まるマニュアルづくり

新規マニュアルを制作するときに一番重要となるのが、マニュアル制作の指揮を執るディレクター(メーカーのマニュアル制作責任者)の役割である。

新規マニュアルを制作するとき、より多くの人の意見を聞くことも重要だが、すべての意見を反映することはできない。みんなの意見をまとめるだけでも大変だし、ものによって方向性がずれては、一貫性のない中途半端なマニュアルになってしまう。たくさんの意見の中からどれを取捨選択していくか、ディレクターが一貫性のある判断を下すことで、整合性がとれたマニュアルが制作できる。 では、ディレクターが中心となって決定していく案件にはどんなものがあるのだろうか。以下にその案件と内容について説明する。

1.企画書づくり

新規マニュアルの制作や既存マニュアルの改訂には、まずどんなマニュアルにするのか、企画書が必要になる。社内にプレゼンした企画とは異なり、ここでいう企画書は新規マニュアルの設計図になるものだ。

新規マニュアルの制作を開始する前にやるべきことを以下に挙げる。
・既存マニュアルの分析と問題点の洗い出し
・製品コンセプトの分析
・ユーザー層の分析
・新規マニュアルのコンセプトづくり
・マニュアルの分冊構成とその役割の検討
・ライティングパターンとサンプルレイアウトの作成

これらの企画は、ディレクター自身が実施してもいいが、多くの調査・分析と経験が必要になるので、マニュアル制作の経験が豊富な制作会社に出すのがベストである。
ディレクターは、出てきた企画案に対して、メーカーや製品のコンセプト・方向性を確認して修正指示を出す。良いところは取り入れ、ディレクターの考えを組み込んでいけば、必ず良い企画書になるので、たたき台はマニュアルのプロに任せるべきである。

2.進行表(行程管理表)の作成/管理

次に重要になるのが日程管理だ。
メーカーが製品を開発して発売するまでには、企画、開発、品質評価チェック、生産、販売など、社内の多くの関連部門が関わってくる。

製品開発の進捗に合わせて品質の評価チェックが行われ、同様にマニュアルの内容もチェックされる。チェックには人員が確保されているので、この期間にチェック用の原稿(校正紙)が必要となる。
また、最後まで仕様が確定しない箇所は最終の仕様確定日を確認し、原稿の締め切り日を調整しておく必要がある。

マニュアルが製品に同梱される場合は、製造ラインの日程を確認し、マニュアルを納品する日時と場所を確認して、制作会社に伝える必要がある。マニュアルの都合で製品の納品日程を変更することは、よほどの理由がない限りできない。

このように、メーカーでマニュアルを制作する場合、開発スケジュールや製造ラインの日程に合わせ、日程を管理する必要がある。裏を返せば、マニュアルの納期が明確なので、その納期に合わせて、マニュアルの進行表を作成すればよい。
進行表を作成するときは、開発の進捗やチェック日程、納品日時の変更にも対応できるように、各納期の前後に余裕を持った日程にしておくとよい。

3.制作スタッフの体制づくり

新規マニュアルを制作する場合、今までマニュアル担当が行っていた業務とは、比べ物にならないくらい忙しくなる。マニュアル担当者を増員してくれればいいが、新規マニュアルの制作が終了すれば、今までのマニュアル制作の業務に戻るので、なかなか増員は難しいだろう。かといって、今いるマニュアル担当者だけで、新規マニュアル制作の業務をすべて賄えるはずもない。

では、どうすればいいのか。

まず、新規マニュアルを制作するのに必要な業務をすべて洗い出す。そして、期日が明確な作業は進行表に明記していく。

・日程の進行管理
・仕様書等書類の管理と制作会社への配布
・制作会社からの仕様確認への対応
・原稿チェック
・他部門へのチェック依頼
・制作会社の事務処理 など

業務を洗い出したら担当者を割り振る。忙しい時期と人員の不足分が見えてくるので、その対応方法を検討すればいい。「制作期間中を通して必要になる事務処理を、派遣社員を雇って対応できないか?」、「原稿の実機チェックを別の制作会社に委託できないか?」など、これだけでもマニュアル担当者の負担は軽減できるはずである。

4.作業ルールづくり

そのほかに、ディレクターが決めていく案件として「作業ルール」の作成がある。制作会社が1日で書けるページ数、版下を作成する工数、原稿をチェックする工数など、ある程度余裕を持った工数を事前に決めておく。そうすることで原稿の作成日程やチェック期間が明確になり、日程を管理/調整しやすくなる。
制作会社が出した日程だけに従っていると、納期遅れの原因となる場合がある。新規ページの作成工数や修正が入った場合の工数などは、あらかじめ決めておくことをお勧めする。

良い制作会社との出会いかた

新規マニュアルの制作会社を募集する場合は、選定を間違えると大変なことになる。
原稿の遅れや制作日程の遅れから、納期の調整が必要になったり、当初の見積金額からどんどん制作費が追加されたり、制作会社に振り回されて苦労することになる。その上、納品されたマニュアルの質が悪ければ、踏んだり蹴ったりだろう。

募集時のポイント

マニュアルの制作会社を新規に選定する場合は、多少面倒だがネット検索などを利用して複数の制作会社を選び出し、コンペを開催することをお勧めする。
プレゼン費用を払ってでも、新規マニュアルの企画書(プレゼン資料)を提出してもらい比較するべきだ。
比較する際は、制作会社に同じ形式のプレゼン資料を提出してもらうことが重要だ。そのためには、提出する資料の作成条件を制作会社に明示する必要がある。その時に明示する条件(資料)には、以下のようなものがある。

制作会社へ提供する資料
・マニュアルを制作する製品の概略仕様(対象ユーザー、主な機能、競合他社、特徴など)
・サンプル作成用の抜粋仕様(ライティング/レイアウト後4ページ程度の説明になる仕様)
・制作費用算出用の資料(簡単なのは既存マニュアルを基に、制作費全般を算出してもらう)
・企画書の基本フォーム(制作会社により記載項目や記載順、記載内容の量に差が出てくる
ので、分量を調整できるようなフォームが望ましい)

制作会社から提出してもらう資料
・新規マニュアルの企画書
・サンプルレイアウトのデザイン(ライティング付き)
・会社概要
・制作担当者一覧
・マニュアルの制作実績
・制作環境(PC・ソフト環境)
・制作費の見積書
・守秘義務契約書(新製品の開発仕様などの資料を渡す場合には必ず契約を結ぶ)

「新規マニュアルの企画書」から見えてくるもの

企画書が提出されたらマニュアルのコンセプトや構成/デザイン/制作費等を確認/比較する。
そうすることで、制作会社の実力がはっきりと見えてくるだろう。

そのほかにも以下の点を確認することで、その制作会社の実力と誠実さが見えてくるはずである。

・要望した提出物はすべてそろっているか?
・制作担当者は人員として足りているか?
・制作実績に、新規マニュアルに合うものはあるか?
・企画書とデザイン、ライティングの精度とその印象は?
・制作環境は充実し、あらゆる要望に対応できるか?
・制作費の見積書は詳細に記載されているか?

上記を確認して、新規マニュアル制作に合う制作会社を選んでほしい。

制作会社を選定する作業は労力も費用も掛かるが、それに見合う結果が出るはずである。
良い制作会社に出会うためにも、なるべく多くの制作会社と連絡を取り、プレゼン資料の作成を依頼してみてはいかがだろうか。プレゼン資料の作成をためらうような会社は初めから除外していいだろう。


長年、大手メーカーのマニュアル制作に携わり、あらゆるマニュアルの制作実績を積んでいます。 新しいマニュアルを作りたい!」「既存のマニュアルをもっとわかりやすく改訂したい!」など、マニュアル制作に困ったときには、ぜひソーバルにご相談ください。