業務マニュアルを改善する

業務マニュアルを改善する

2022年4月18日

業務マニュアルを改善する

業務マニュアルとは

マニュアルといえば、家電製品やPCソフトなど、一般ユーザーを対象にした製品に付属している取扱説明書を思い浮かべる人が多いだろう。
しかし、マニュアルには、専門業務を担当するサービスマンやオペレーター、技師などを対象にした以下のようなマニュアルもある。
・オフィス機器の定期メンテナンスや修理用のサービスマニュアル
・製造機器やロボットを操作するためのオペレーションマニュアル
・機器の管理システムを操作するためのソフトウェアマニュアル
・医療機器の検査方法や判定方法を説明した操作マニュアル
その他にも、日常業務での顧客対応や事務処理などをマニュアルにする場合や、顧客管理や契約処理、会計処理を行うときの業務フローをマニュアルにする場合もある。

業務マニュアルとは、一般ユーザーを対象としない特殊な機器や、管理システムの操作、日常業務の作業フローについて説明したマニュアルの総称である。

業務マニュアルを改善するメリット

では、業務マニュアルで問題となるのはどんな点だろう。
①専門家を対象としているため、わかりやすさよりも正確さが求められ、難解なマニュアルになっている。
②システムや機器のマニュアルは、導入時に開発者が書いたマニュアルが多く、仕様書のままの記載になっている場合や、改訂されていないままになっている場合がある。
③機能説明が中心となっており、何に使う機能かタイトルからは不明で、目的ベースで検索しにくい。
④トラブル対処や検索性は、考えられていないことが多い。
⑤使用者別に分冊等でカバーしているケースは少ない。

一般ユーザーを対象にしたマニュアルが上記のような状態なら、ユーザーからのクレームが増える。メーカーはクレーム対処費用を抑えるため、マニュアルを改善するケースが多い。
それに対して、業務マニュアルは社員向けのマニュアルのため、費用をかけてまで改善するケースは少ない。

ただし、業務マニュアルを改善することで、得られるメリットは大きい。

①無駄な時間を削減する=コストを削減する

・検索性を改善(タイトル名を変更、索引の拡充)することで、必要な記載にたどり着く時間を短縮でき、検索にかかっていた無駄な労力を削減できる。
・業務別に作業フローマニュアルを作成することで、新たな人が入った場合に、マニュアルを見て業務を覚えることができる。既存のマニュアルをもとに、教育係が事細かに教える必要がなくなり、業務フォローに費やす人員が不要となる。
・トラブルシューティングを作成することで、トラブルが起きたときに、上司やベテラン社員、開発担当者に確認していた時間を削減できる。

②誰が操作しても同じ結果になる=品質が向上する

・わかりにくいマニュアルから操作方法を検索した場合、個人によって業務内容に差ができる場合がある。業務ごとに明確な作業フローを作成することで、誰が操作しても同じ結果となり、安定した品質を保つことができる。
・業務ごとに明確なQ&Aを作成することで、困ったときやトラブルに対して、誰でも同じ対応ができる。

改善するときに注意すべき点

では、業務マニュアルを改善するときには、どんな点に注意して作業を進めるのか、業務用管理システムのマニュアルを例に説明する。

多くの企業で導入されている管理システム

中小企業から大企業まで、業務の効率化と管理を目的に、業務用管理システムを導入しているケースが多いだろう。企業の各部署で担当する業務は細分化され、業務用管理システムを使用して顧客データを処理し、他部署でもデータを共有して、処理/管理しているケースも増えている。

例えば、新規に顧客と契約を結ぶ場合は、以下のような流れが想定される。
①営業部門で契約の手続きを行う
②契約後は顧客管理部門で顧客データを登録・管理する
③経理部門では顧客データをもとに請求書を発送する
上記のように一つの案件に対して複数部門が事務処理を行うのは、企業では当たり前となっている。この一連の事務処理を、管理システムを導入して行っている企業も多いだろう。企業が大きくなれば、事務処理はさらに複雑になり、各部門共通の管理システムも複雑になってくる。

業務マニュアルの実態

しかし、各部門で別々の業務処理を行っているにもかかわらず、すべての部署で同じマニュアルを使用している場合が多い。たいていは、管理システムを導入したときに、システムを開発した会社から渡されたマニュアルである。

このマニュアルには、管理システムの開始方法から全メニューの機能と画面説明、基本操作から管理者用の設定、エラーメッセージと対処方法まで、膨大な説明が開発者ベースで記載されている。
ひどいマニュアルになると、管理システムに表示される画面のみを説明した画面仕様書が、説明内容のすべてになっている場合もある。説明は画面単位で、タイトルも画面名称になっているため、どんな目的で使用する画面なのか、他の画面とのつながりすら、わからないケースもある。

管理システムを使用した業務が発生すると、担当者は、このマニュアルから業務で必要となる機能を検索して操作しなければならない。自分でひたすら検索して見つけ出す場合もあるし、上司やベテランに聞いて回ることもあるだろう。マニュアルが膨大になれば、さらに検索性も悪くなり、作業効率は悪くなるばかりだ。

検索作業に手間取れば業務は遅れ、遅れを取り戻すために残業することも多々あるのではないだろうか。この作業を時給に換算すれば、いかに無駄が多いのか明確になるだろう。これを管理システムを使用しているすべての部署に換算すれば、企業にとって莫大な経費となる。
この無駄な経費は、マニュアルを改善することで減らすことができるのである。

マニュアルを改善するための準備

マニュアルを改善するには、マニュアル制作会社に依頼すれば済むと思ったら大間違い。確かにマニュアル制作会社に依頼すれば、それなりのマニュアルはできる。しかし、問題点の洗い出しから企画、構成、ライティングなどの作業をすべて依頼したら膨大な費用がかかるばかりで、改善を期待していたマニュアルとは違ったマニュアルができ上ってしまう場合が多い。 マニュアル改善を依頼する前に、以下の準備を行って、マニュアルの改善方針を明確にしておくことをお勧めする。これにより、制作会社に依頼する内容が明確になり、余分な制作費用を削減できる。

①既存マニュアルの内容を確認する

まず改善するマニュアルの目次をExcelなどに転記し、簡単な記載内容、説明されている機能名を明記して目次構成を作成する。また、出力ファイル等がある場合はその名称も明記する。

管理システムの使用者にアンケートを実施

①で作成した目次構成を使用し、各部署の管理システムの使用者に、既存マニュアルの使用状況と使用頻度、問題点についてアンケートを取る。
アンケートには以下の内容を盛り込む。
・部署名と担当業務
・使用しているマニュアルの種類
・参照する説明と参照目的(業務内容)
・マニュアルごとの改善点(検索性、記載のわかりやすさ、その他改善要望を具体的に)
・既存マニュアルで不要な記載
・新たに追加してほしいマニュアル・記載項目

③アンケート結果をまとめる

②のアンケート結果をまとめて、既存マニュアルの問題点を洗い出す。部署ごとに、使用機能とマニュアルの参照先、業務内容を明記し、改善要望をまとめる。
担当者(係や役職等)により業務内容が異なる場合は、業務内容と使用する機能名称を明記する。
他部門と関連する処理等がある場合は、対象となる部門を明記し、その業務内容と処理内容を明確にする。

マニュアルの改善方針をまとめる

次にアンケート結果をもとに、マニュアルの改善方針をまとめる。マニュアルの改善は、予算の都合もあるので、アンケート結果の要望をすべて反映することはできない。そこで、どの要望になら対応できるのか、要望内容を精査して改善方針を検討する。

予算がある場合は、既存マニュアルを全面改訂し、操作内容が異なる部署ごとに作業フローに基づいたマニュアルを分冊して追加することもできる。

予算が少ない場合も、業務ごとに作業フローを作成し、業務に必要な説明が記載された既存マニュアルの参照先をリンク付きで明記するだけで、検索性は上がるだろう。

また、使用頻度の高い機能を一つのマニュアルにまとめるだけでも、十分に成果を上げることができるだろう。

マニュアル制作会社への依頼準備

既存マニュアルの改善について、予算に応じたマニュアルの制作方針がまとまったら、マニュアル制作会社に提供する資料を準備する。 マニュアルの改善を依頼するには以下の資料が必要だ。

①企画書

既存マニュアルの改善には、まずどんなマニュアルにするのか、企画書が必要になる。

既存マニュアルの分析と問題点の洗い出し、ユーザー層の分析、マニュアルの分冊構成とその役割などを決めておく必要がある。 ただし、この時点での企画書は、マニュアル制作会社へ既存マニュアルの改善方針の概要を伝えるのが目的である。企画は、さらに既存マニュアルに対する多くの調査・分析が必要になるので、マニュアル制作会社に再度提出してもらうのがベストである。

②進行表

次に重要になるのが日程管理だ。業務マニュアルが企業内の複数部署に使用されている場合は、各部署にチェックしてもらう必要があり、チェック期間を各部署に確保してもらう必要がある。マニュアルの制作状況と、各部署にチェックしてもらう期間を明記した進行表を作成する。

③作業ルール

マニュアルの基本レイアウト、説明内容、記述ルール(使用する用字用語など)を決めておく必要がある。

マニュアル制作会社を新規に募集する場合は、『新規マニュアルの担当者になったら』の「良い制作会社との出会いかた」の説明で【制作会社へ提供する資料】と【制作会社から提出してもらう資料】について説明しているので、参考にしてほしい。


ソーバルでは、長年、大手メーカーのマニュアル制作に携わり、あらゆるマニュアルの制作実績を積んでいます。 この経験を活かして執筆規約や記載ルールに基づいマニュアル制作をしています。お客様の要望に応えたプレゼン資料を作成してお届けしますので、ソーバルまでお気軽にご相談ください。